伝統技術

屋台づくりの込められた伝統の技術・匠の技

車輪

日本全国の中でも遠州地方の屋台の車輪は大型で人の背丈ほどの大きさです。
山本建築では、この祭り屋台専用の木製車輪を製作しています。
材料は主に良質なケヤキやカシを使用し、熟練の技術により車輪を組み上げます。

屋台の車

屋台の車輪

堅固で真っ直ぐな芯の通った人間は、振れることがありません。屋台にも振れることのない心棒があります。屋台の荷重を支え、動き回る2つの車輪を繋ぐ部分です。“屋台の車は心棒で回る”と歌われるほど、重要な役割を担っています。

車輪の側面に、はめ込まれた輪板(わいた・はいた)。現在の遠州森町では、8枚の輪板を使った屋台を大八車、7枚の輪板を使った屋台を大七車と呼んでいます。輪板は、羽板(はねいた・はいた)、端板(はしいた・はいた)、大羽(おおはね)、櫛形(くしがた)の名称もあります。

心棒と車輪の中心を固定する轂(こしき)には、確かな目利きで選び抜いたケヤキを使っています。玉木(たまき)とも呼ばれる轂は、しっかりと乾燥した木材でないと後に割れや空きの原因になります。頑強な部材が必要となり非常に貴重なため、他県をはじめ遠方からのお問い合わせも頂いています。

大工が木製車輪を作り、鍛冶屋が輪締めをする。大昔では、よくあった流れですが、現在ではなかなか輪締めができる鍛冶屋さんは少ないのが現状です。山本建築では、地元のみなさんが安心して、お祭りを迎えられるように日々技術を磨いて、良質なお祭り屋台の車輪を製作しています。

コマ

コマ

樹齢100年以上の巨大なマツの丸太を輪切りにして製造する四輪屋台の車輪。とてもシンプルな構造の車輪ですが、現在では手掛ける大工が少ない状況にあります。山本建築では、これまでの経験と技術を活かして、屋台の重量を支えながら回転する厚みのある頑強なコマの製造をしています。

心棒

心棒

木製の場合には、非常に硬く強度のある木材・カシを採用しています。特に膨張や収縮の少ない芯去り材を選び、丈夫で長持ちするものを製作いたします。しかしながら、心棒を受ける部分である鉄製の釜金(かまがね)との摩擦により、木製の心棒は徐々に削られていきます。そのため、消耗品と考えなければならず、定期的な点検やメンテナンスが必要となります。

より使い勝手の良いように、一本スペアの心棒を常備して、毎年ローテンションしながら使用することを推奨いたします。スペアは、グリスを塗りサラシを巻いて、保油や防錆に留意しながら、大切に保管をして下さい。土間などに直接置くのではなく、角材や板の上での保管をお願いします。夏前の屋台の虫干しの時期に合わせて、心棒の交換をすると良いでしょう。

心棒

木製の心棒の場合には、釜金との摩擦の音、あるいは軋む音が、祭典の賑々しさに華を添えます。その響きを求めて、マツヤニを塗ることも。また古くは各地域で育ったカシの材木を使って、心棒をつくり、より地域に密着した屋台を製造していました。地元に良いカシの木材がありましたら、どうぞお知らせ下さい。

鉄製の場合には、木製に比べて耐用年数も非常に長く、折れることもありません。またメンテナンス・フリーで扱いやすいといった利点もあります。ただし、木製の心棒とは逆に、屋台の荷重を支える鉄製の心棒を受ける部分の釜金が摩耗してしまうことがあります。釜金の交換は、大掛かりな作業工程となりますので、車輪のガタツキや不具合などの兆候がありましたら、速やかにご連絡をお願いいたします。

彫刻

古くから伝わる神話やおとぎ話、昔話などの神様や動物、登場人物、地域にゆかりのある模様などを彫り上げます。各地域のみなさんの好みや趣向、オリジナリティーを盛大に表現することが可能です。木材選びから屋台全体の均整を考慮して、山本建築と彫刻師が協力して、みなさんのご要望にお応えします。伝統と技術、そして生命の吹き込まれた各種の彫刻をお楽しみ下さい。

欄間

屋台の車輪

欄間(らんま)は、屋台の前後左右にある上部の横長の部分です。勇壮な裸龍もあれば、みなさんがご存知の昔話やおとぎ話、神話などが描かれる事が多くあります。屋台彫刻の重要な部分のひとつであり、各地域のみなさんが特に力を入れる場所です。裸彫りのように彫り抜くので、立体的で今にも飛び出してきそうな躍動感と生命力が溢れる形に仕上がります。

御簾脇

屋台の車輪

御簾脇(みすわき)は、屋台正面にある両サイドの縦長の部分です。横長の彫刻が多い中、縦長のスペースなので、人物像の物語が取り入れやすく、勇ましい戦いの様など左右で展開できるのが大きな魅力です。上下に動きのある題材では、鯉の滝登り、獅子の子落としなどダイナミックな彫りを演出できる空間です。

木鼻

屋台の車輪

屋台の外側に向かって出ていて、上部を支える場所、木鼻(きばな)。木の端という意味で、木端とも書かれます。獅子や貘(ばく)、力神や龍など多くの題材が取り入れられます。口を空いている阿像(あぞう)、口を閉じている吽像(うんぞう)が連続して並ぶ場合もあり、さまざまな工夫もできます。特に4つの角の隅木鼻(すみきばな)は、2方向から見られるので、特に印象的です。上部の出組の構造美と調和した屋台の大きな見所のひとつです。

支輪

屋台の車輪

支輪(しりん)は、欄間よりもさらに上部にあり、出組(でぐみ)の間に挟まれた部分。その後側に裏板が、はめ込まれることにより、一層陰影が増します。幾重にも連なる出組みの構造美は、安定感がありながら豪華絢爛。昔から現在に残る伝統の形は、それぞれを有機的に結び付け、ひとつの屋台装飾として成立します。支輪彫刻が付いている屋台は、大阪・だんじり祭り、愛知・半田祭り、そして静岡・遠州森の祭りにしかありません。全国的に見ても珍しい屋台になります。

持ち送り

屋台の車輪

持ち送りは、柱から水平に突き出る隅木(すみぎ)や上部の梁などを下から支える部分です。古くから神社やお寺の建築などにも多く見られます。御簾脇や欄間などの彫刻と並んで、屋台の装飾美を左右する大事な部分です。

太鼓台

屋台の車輪

彫り物の配置は、各所に反映し工夫する事ができ、祭り屋台のアクセントやワンポイントにオススメです。こちらは太鼓台の下の力神(りきじん)。太鼓台を勇ましく担ぐ姿が、力強く表現されています。彫刻師によるケヤキ彫りで、凛とした面構えに仕上がっています。

漆塗

日本で古くから植栽されるウルシ科の落葉高木で、その樹液の名称にもなっている漆(うるし)。美しい光沢と防湿性、防腐性から工芸品や食器類にも多く採用されています。漆塗りは数々の細かい工程を経て、最終的に美しい光沢に仕上がります。繰り返し、繰り返し、漆を塗り、最後には磨きを掛けるのです。伝統の文化と技術が、その輝きをより一層引き立てています。

ご予算に応じて、代用漆を採用することも可能ですが、祭りという晴れ舞台に本漆塗りの屋台で颯爽と駆け抜けて、町に華を添えてみてはいかがでしょうか。

螺鈿細工

夜光貝や蝶貝などの貝殻を、漆で塗り重ねて装飾する技法、螺鈿(らでん)細工。螺は貝を、鈿は飾りを意味します。真珠のような美しさが輝きを放ちながら、各地域の伝統的な文様や象徴、縁のある物語を描き出します。

龍泉塗り

山本建築と漆職人により、日本の綺麗な色合いを基本に、角度によっては七色に輝く、龍泉(りゅうせん)塗りを考案。伝統を受け継ぎながらも現代に新たに生まれた祭り屋台に似合う漆塗りの手法で、今までにない表現力が加わりました。

梨地塗り

梨の肌のような表面で、金や銀、錫(すず)などの粉が、ちりばめられた漆の塗り方。落ち着いた大人の綺羅びやかさを漂わせます。

木地呂塗り

木の目や柄を活かす漆の塗り方、木地呂(きじろ)塗り。ケヤキなどに適している手法で、木の本来の自然の美しさを際立たせます。

白檀塗り・高蒔絵

漆の中に金箔を閉じ込める技法、白檀(びゃくだん)塗り。内部から輝きを放つ美しさが屋台を包みます。漆を盛り上げて重ね塗りを施した高蒔絵(たかまきえ)。白檀塗りと高蒔絵の組み合わせによって、生命感のあふれる唐獅子親子と唐草が完成しました。

錺金具

「錺」という漢字は、「かざり」と読みます。意味は、金属製の装飾細工。
屋台を煌めかせる金物の装飾は、古くから錺金具(かざりかなぐ)と表記されてきました。

金鍍金(きんめっき)された錺金具は、非常に華々しく鮮麗です。昔から金・銀・銅として社寺建築などの装飾にもよく採用されています。金具の文字や唐草模様は職人が全て一つひとつ手づくりで仕上げます。美しい模様に、さらにアレンジを加えて、屋台の姿に似合う新しいデザインを産み出します。

錺金具は、数千本のオリジナル鏨(たがね)を巧みに操り、一枚一枚を職人が丁寧に仕上げていきます。それは心の込もった芸術品です。錺金具には色々な技法があり、またそれぞれに特徴があります。素材を裏から叩いて文字を盛り上げる「浮かし文字技法」や、文字を引き立たせるために背景を黒くする「墨差し技法」、他にも「重ね出し」や「切り抜き」など多彩です。

屋台の錺金具や神仏金具の世界はとても深く、日本の古来より美しいとされる模様で漆塗りを引き立てます。付ける位置など、実は一定の法則があります。基本的には左右対称ですが、上下にも同じ位置に付かないと、どこかに違和感が出てきます。人の目や感覚の鋭敏さには、計り知れないものがあります。昔から現代に伝わる文化や技術には、それぞれの淘汰されない理由があり、人間の根源的な部分に訴えかける何かが備わっているのかもしれません。

その他装飾

彫刻や漆塗、錺金具の他にも、屋台に華やかさや彩りを添える装飾があります。それは、建具や脇障子、御簾、天幕など。屋台の形状や地域に合わせて、さまざまな特徴やこだわり、心意気を表現できます。

建具

建具(たてぐ)は屋台の側面を飾るもの。色合いだけでも屋台の特徴を表現できます。格子組の組子が多く、帯に見立てた横に連なる幾何学模様のデザインを採用して、引き締めのアクセントにする事も。建具の腰の部分には、伝統的な格狭間(こうざま)を入れたり、薄彫りを施したり、もしくは漆塗りや蒔絵で、あなたの町の個性を無限に引き出せます。

脇障子

脇障子(わきしょうじ)は、出組型の御簾脇の外側に並ぶ障子で、屋台から出ている袖ように見える部分です。表と裏があり、両面に透かし彫りや組子を採用できる唯一の部分で、正面から見た時のインパクトをさらに盛り上げます。内側から外側に向かって消えていく透かし彫りの良さをより引き立てたり、上部にさまざまなこだわりの格狭間を取り付けたり、粋な装いを加えられます。

御簾

御簾(みす)は、すだれの呼び名で、竹を糸で編み布地で縁を付け、房を下げたもの。直線に編む方法や数少ない職人の技術による亀甲編みなどもあります。布地の部分には、さまざまな文様と共に白文字に綿を入れて、浮かび上がらせ立体感のある仕上げにする事も。伝統的な金糸で、地域や屋台の名称を縫い上げ、命を吹き込めます。

天幕

屋台の周囲を飾る布地の幕。屋台様式によって、天幕の形状が決まります。赤色や紺色、鶯色などで、一際目を引くものも。刺繍には町に縁のある物語や紋を入れる事ができます。織物で有名な各地域の素材を利用して、みなさんの心意気を表現します。